どこの世界にも「やれない理屈」を考え出すのが得意な人がいる。

例えば、ほかの仕事の途中だ、前例がない、やってもやらなくても大勢に影響しない、今の自分には無理、そこからトラブルに巻き込まれる可能性がゼロではないなど、きりがない。

 その人はそんなことはみじんも考えなかったのだろう。10数年前、トレーラーを運転中に軽乗用車の横転事故に遭遇。車内に閉じこめられた2人を助け出し、後続車のために車を移動させようとした。そこに車が突っ込み、彼は亡くなった。

 こんな場面に出くわしたら、あなたならどうするだろうか。理屈をつけて見て見ぬふりをする人は少なくないだろう。触らぬ神にたたりなしという言葉もある。彼もそうしていれば、事故に巻き込まれることはなかった。

 国の担当者もそんな人たちだったのだろう。彼の一連の行為は、自分で勝手に業務を中断してやったことであり、労災には当たらないとして、遺族の労災申請を退けてきた。役人らしく、しゃくし定規に「やれない理屈」を掲げ続けた。

 それがやっと覆ったのだ。名古屋地裁は、救助もその後の復旧作業も業務遂行中の災害と認定した。10年もかかったのは遺族に気の毒だったが、「やれない理屈」よりも人として大事なものがあると示した運転手と裁判官の存在には、心が温まった。

 「やれない理屈」をひねり出すよりも、「やる理由」を考える方がはるかに有意義で楽しい。 私たちも「やる理由」を見出し突き進みたい。

担当は山科でした。