テンピュールというスウェーデンの会社をご存知だろうか。もともと1970年にNASA(米国航空宇宙局)のエームズ研究センターで宇宙船内の座席用に開発された素材を活用して、枕、マットレス、クッションなど、さまざまな製品を製造している会社だ。少し前までは睡眠用具の「通」しか知らない、知る人ぞ知る会社だった。しかし、最近は快眠グッズへの関心の高まりもあり、広く一般に知られるようになった。

顧客が買うのは

「枕」ではなく「快眠体験」

以前より、いくつかの大手百貨店にはテンピュール製品の体験ができるキャビンが設置され、そこで13分間のナレーションを聞きながら、可動式のベッドと枕の体験ができるようになっていた。わずか13分の体験では、本当によく眠れるようになるかは正直わからない。だが、素材の手触りや肌触りを直接体験できることで、良質の枕やベッドであることを実感することができるものだった。ある百貨店の店舗では、わずか20坪程度の売り場にもかかわらず、月の売上げが2000万円を超えていたとのことだ。

これに加え、テンピュール枕が売れるようになったのは、ホテルの寝室で利用した人の評判がよく、多くのホテルが標準枕として採用するようになったこともある。忙しいビジネスマンが、出張先で疲れて寝床に就くときに、心地のよい枕があれば、印象に残りやすくなる。「この枕は何という枕か」「いくらで買えるのか」といった質問が、特に中高年の宿泊客からホテルに多く寄せられたという。

この例では、枕を売るのに単に枕だけを商品として売るのではなく、その枕を使った快適な睡眠体験を提供している。つまり「店頭での枕販売」から「ホテルでの快眠体験の提供」へと売り方が進化しているのだ。枕に限らず、快眠グッズは、すべてエクスペリエンス型商品といえる。だから、これらの商品を売りたいなら、こうした商品を利用した「快眠体験」を売ることが肝心だ。

さて、こうしたエクスペリエンス・ビジネスの事例が私たちに教えることは、いったい、何だろうか。

それは、顧客にとっての商品体験の価値が高いと、商品の価値も高くなるということだ。つまり、商品の価格が多少高くても売れるのである。しかも、商品は食べたり、使ったりしてしまえば残らないが、商品体験は人の心に残るという性質があるのだ。

だから、商品を売りたいなら、商品体験を売ることが大切なのである。

このことは、学習塾に関しても同様ではないだろうか。学習体験を売ることが一番の近道と言える。

新米の山科でした。